いつか、また


「なんか見たことある子がいるなぁ、って思ったらあの時のボールペンの子なんだもん。ついつい声掛けちゃったよね」


悪戯のような顔で少し困ったように言う希緒に、花奈は胸が暖かくなるのを感じた。


「あの時は・・・ありがとうございました」


ずっとお礼を言えず仕舞いだったことを気にしていた花奈は座ったまま頭を下げる。すると希緒は慌てて両手を振った。


「あ、頭なんか下げないでいいよ!? わたしが好きでしたことだし、・・・わたし、困ってる人を見ると放っておけない性分なんだ」


パタパタと忙しなく振られる両手に花奈は思わず頬が緩む。それを見ていた希緒も吊られて朗らかな表情になった。


「そう言えば、希緒さ・・・センパイは何処の学科なんですか?」


「「さん」とか「先輩」付けじゃなくていいよ? 敬語とか堅苦しいし………芸術科だよ、花奈は?」


芸術科、舞台やテレビ、声の仕事を将来希望する人達の集まる学科で、自分と同じところに通っていると知った花奈は何処の専攻かを尋ねた。


「へぇ……わたしは舞台演出・技能科だよ。……花奈は」


「舞台表現・基礎科です」


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