いつか、また
演出・技能科は、所謂「裏方」と呼ばれる役職を目指す人専用の学科で、名前の通り舞台に対する知識を座学と実技を通して学んでいく学科だ。
「縁の下の力持ち、っていうのかな……そういう人の影に隠れる仕事が好きなんだ」
照れたような仕種で此方を見詰める希緒。見た目は舞台映えしそうなのにそれに反する言葉に花奈は好感を持った。
「周りからは表現・基礎科に行けばよかったのに、って今でも言われるよ」
2年は進路決めないといけないのにね、苦笑混じりの溜め息を吐いた希緒は何処ともなく目の前の飲み物を見詰める。
「・・・なんて、つまらない話してごめんね? 折角頼んでくれたのに紅茶も冷めちゃった」
桜の浮き彫りが刻まれたティーカップを手に取りそっと口付ける。
「あ・・・この紅茶、桜の匂いがするね」
美味しい、希緒は言うとあっという間にカップを空にしてしまった。
「こんな長々と居座ってごめんね? じゃ、また会おうね!」
伝票を持って颯爽と去って行く後ろ姿に、花奈は胸の高鳴りを覚えた。