プリンセス☆ロード
「セリムさま、紗南ちゃんは異世界から来たんですよ!」
「ああ、聞いてるよ。この世界を救う姫、なんだって?」
「えっ、いや…私にはそんな力…」
皆が望んでいるような力なんて、ないんです。
そう言おうとしてやめた。
こんなところで愚痴ったって駄目だ。
自分の居場所がなくなるかもしれないことを言うのはやめよう。
皆は私だから側にいてほしいって言ってくれたけど、私の力を信じているのも確かだろう。
私に存在価値がなくなったら、皆はどうするだろう。
それが、怖い。
そんなことを考えてると優しい手が私の頭に乗せられた。
「え…?」
「疲れただろう、部屋を用意しているからゆっくり休むといい」
王様が優しくそう言うと私の頭に乗せた手をそっとなでるように動かした。
心が落ち着くよう…。
その時、突然腕を引っ張られ王様の側から引き離され、大きな優しい手も私の頭の上から離れていく。
トン、と誰かの胸に肩がぶつかる。
顔を上げると、それはレンだった。
「レン…?どうしたの?」
私の腕を引っ張ったのはレン。
私はレンを見上げる。
「…別に。…セリム、早く部屋を用意しろ。俺は疲れたんだ」
「ふふ、はいはい」
そんなレンを意味深な表情で見つめ王様は鍵を取り出しレンに差し出した。
私たちがお世話になる部屋のカギだろう。
レンはそのカギを無言で引っ掴むと私の腕を掴んだままその部屋を後にした。
「まったく…、相変わらず素直じゃないね」
そう呟いた王様の声は私たちには届かなかった。