プリンセス☆ロード





「自分の心を見透かされるのが、怖いんだ。あいつは、辛いも悲しいも、悔しいも、人に見せるのが苦手だから」

「…」

「でも、私はそれを見抜いてしまうから。そして、見抜いたらそれを言わずにはいられない。言われると、気づいてしまうからね。自分が逃げていた心に」





見ないようにしてきた心。
深く深く奥底にしまって、ふたをした思い。
苦労してしまった思いをいとも簡単に引き出される。

それはどれほど、心が乱されるだろう。






「あれは、人一倍傷つきやすいくせに、弱さを見せることは負けだと思っているからね」

「レンが…?」

「口が悪いのも、虚勢を張るのも、弱さを隠すためだよ。見栄を張って、強くみせようと。傷つきたくないから。傷つくのが、怖いから」






傷つく前に、相手に壁を作ってしまえ。
弱さなんて、見せる隙を作らない。

心なんて、絶対に開かない。



そう、言われている気がした。







「だから、驚いたんだ。久しぶりに会って、少しレンの気が穏やかになっていてね」

「穏やか…ですか?」

「昔はもっと、刺々しかった。…特に、あの頃は…」






なにか、遠い昔を思い返すように空を見上げる。
空には、星がちりばめられている。




月のない星空にも、慣れた。
この空を見るたびに、ここは私の住み慣れた世界ではないと思い知る。






「いずれは、元の世界に戻る身なのだろう?」

「…え?」






セリムが静かにそうつづけた。





< 155 / 469 >

この作品をシェア

pagetop