プリンセス☆ロード
「それを恐怖に思ったのは、あなただけではないはずだよ。レンも同様。守ると決めた者が敵の手に奪われ、傷ついて戻ってきた。どれほどの恐怖だろうね」
「…っ!」
「そしてこの次、悪魔に襲われた時…その時のことを思い出して死に物狂いであなたの事を守ろうとするでしょう。我を忘れて」
なにが、言いたいの…?
「本来、騎士としてはあってはいけないことだよね。我を忘れるなんて。でも、必ず、そうなる。そうなったとき、彼は生き残れるかな?頭に血が上って判断力を失った彼は格好の餌食だろうからね」
「やめて…」
「でも、そうなってもあなたは自分では何もできないお姫様だ。そう、ただ守られるだけの」
そんなこと、わかってる。
自分が非力で無力だってこと。
足手まといにしかならないってことも。
それでも、皆の優しさで側においてもらってること。
「そんなあなたのために、きっと命を落とすものが現れます。仮にそれがレンじゃなかったとしても、誰かがきっと」
「…っ」
「それが、現実」
溢れだした思いは涙となって流れる。
わかってたことを、口に出されて苦しい思いに何も言えなくなる。
「…また、私は余計なことを言ってしまったかな」
「いえ…」
「ですが、あなたが覚悟を決められた時には私を頼ってください。私なら、きっとあなたのお役にたてるでしょう」
セリムがそう言うと大きな優しい手で私の頭を撫でてくれる。
しばらく私はそのまま泣き続けていた。