プリンセス☆ロード
「それは、君」
「え?」
「正確に言えば、ルネス国に伝わる伝説。救いの姫だよ」
「救いの姫…」
「そう。どういうわけだかね、異世界から来ると言う救いの姫は、ルネス王国にしか現れない。そして、例にもれずルネス王国の妃になる」
ルネス王国の先代の王様のお妃さまも異世界から来た救いの姫だと言っていた。
10年ほど前に亡くなったと聞いたけれど。
「ルネス国は、救いの姫の話を大々的にしてはいなかったよ。秘密事項として、取り扱われていたようだから。それでも、各国の王の間では話題だった。この世界の誇りだと」
「世界の誇り…ですか?」
「ああ。正確には、今まで本当にこの世界を救えた姫はいない。現に、いまだに悪魔の脅威は続いているからね」
「あ…」
「でも、他の国からしても、それは救いの手だったんだ。この世界を救ってくれるんじゃないか。悪魔の脅威からいつか、救い出してくれるんじゃないだろうか、と…」
それほどまでに期待され、待望されている異世界からの客人。
それを姫と讃え、祀り上げ、自分たちの世界の救世主とする。
本当に、その人たちに力なんてあったんだろうか。
私には、そんな力、ない。
「それが、気に食わなかった私の父は、どうにか救いの姫をわがものにしたかった。父が生まれたころには、もうすでにその救いの姫はその世界に存在していた。父が生まれた数年後に、その姫も子をなしている」
「それが…今の王様?」
「そう。父は、ほしかったんだ。ルネス国はその救いの姫の存在は王族の中で上げていても、詳しい言い伝えの内容とか、その力がどんなものなのかは他国に話すことはなかったから、その神秘ともいえる力が、ほしかったんだ」
「それで…どうなったんですか?」
嫌な予感しかしない。
欲にまみれ、ほしいものを手にしなければ気が済まない王様。
彼が、次にした行動とは…。
「力ずくで奪おうとした。救いの姫も、それにまつわる文献も。全部ね」
「…っ!」
「兵を引き連れ、ルネス王国に夜襲をかけた。それが、10年前」
「10年…」