プリンセス☆ロード
「…その戦いで、ルネス国の先代の王と妃である救いの姫は亡くなった」
「…っ!!!」
「父は結局、何も手に入れることはできなかった。ただ、手元に届いたのはそれに関する文献だけ」
ウイリアム王は、なにも言わなかった。
先代の王と妃が亡くなった理由なんて。
言えるわけなかったんだ…。
特に、同じ救いの姫と言われる私になんて。
「…そんな王を、父を手にかけたのは私」
「えっ?」
「他国の王に戦を仕掛けるなんて、許せなかった。私は、ルネス王国の先代の王に会ったことがあったし、とても親切にしてもらっていたから。その妃さまにも暖かい温もりをもらっていたから。自分の親からもらうことのできなかった温もりを…」
「セリム…」
「父を手にかけ、その足でルネス王国に行った。どうか、私を好きにしてください。殺されても、拷問を受けても、本望ですから、と…」
「そんな…」
「でも、先代の王がなくなり、王位を継承した今の王はそれを許さなかった。泣いてくださったよ」
泣いて…。
「自分の父を手にかけるのは、どれほど辛く覚悟がいったことだろう…って。互いに失ったものは大きい。信頼も、失った命の数々も、それを償うにはどれほどかかるだろう。申し訳ないと思うのなら、君が王位を継承し、国民に返していきなさい、と。自分は私の事を許すから、と」
セリムの瞳に涙が浮かぶ。
どれほど救われたろう。
死を覚悟していただろう。
それでもいいと、思って向かった先で暖かい言葉をもらった。
でも、その荷は重かったろう。
失った信頼を取り戻すことは容易ではなかったと思う。
でも、その結果は見てわかるとおりだ。
町の人たちは笑顔に溢れ、とても暖かい町だった。
誰も、不平不満をこぼす人を見ていない。
そう、愛にあふれていた。