プリンセス☆ロード




「レンが、私を苦手としているのは、そのせいなんだよ」

「え…?」

「私への罪悪感。私のたった一人の家族を奪ったという罪悪感」

「あ……」

「私はね、レンを責めたりはしなかった。手紙を見せさえしたけど、それだけ。その代り、何にも興味がわかなくなった。楽しいも悲しいも美味しいもそんな感情消えてしまったのさ」

「…」

「それさえも、自分のせいだと自分を責めてる。バカな奴なんだよ」








レンのせいじゃない。
セリムのせいでもない。
ユリアさんのせいでもない。


それなのに、どうしてみんなが苦しまなくちゃいけないの?








「昔は、よく笑う子だった。でも、ユリアの死後本当に笑わなくなったんだ。…笑えなくなったと言った方が正しいのかな」

「レンの笑顔…」

「それに、自分に厳しくなった。どんどん自分を追い込んで、自分に重荷を科して、自分の罪を忘れないようにしているように見えたよ」

「レン、誰よりも騎士の訓練頑張ってた。本当に自分を痛めつけるくらいに。我武者羅に…」

「でも、最近君たちとここに来た時のレンを見て、安心したんだよ」

「え?」

「少し表情が柔らかくなってた。君たちに心を開いているように見えた」







少しでも、その傷がいやされていたのならうれしい。








「大切な存在に、出会えたんだと嬉しかったんだよ。本人は、気づいていないようだけどね」

「…気づかないようにしているのかもしれません」

「そうだね。私もそう思うよ」

「紗南さんが大切になっていけばなっていくほど、失うことを考えてしまっているのかも。紗南さんをかばうレンを見て思ったんです。レンなら、敵に背を向けるなんてありえませんでしたから」

「ああ。立ち向かうことを選ぶだろうね」

「でも、背を向けかばうことを選んだ。無意識に、失うことへの恐怖があるのかもしれません」







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