プリンセス☆ロード
「紗南ちゃん、かっこいいね。そこら辺の男の子よりずっとかっこいい。って、小学校の時の友だちに言われたの」
放課後、補修が終わるのを待ってくれていた美由紀と浩太に話を始めた。
二人は黙って私の話を聞いてくれる。
「ただそれだけ」
「それだけ?」
「うん。…私ね、普段はかわいい格好をして過ごしてたの。でもね、その言葉を聞いて、ああ、私ってみんなにはかっこいいってみられてるんだって思ったの」
「うん」
「本当は、ちゃんと女の子として見られたくて、リボンとか、そう言うのが好きな女の子なのに、皆はそんな私がどんなふうに見えてたんだろうって思ったら全てが嫌になった」
女の子に見てもらえない。
きっと、褒め言葉だった。
それでも、私には、辛い言葉だった。
「私ね、漫画とかに出てくるお姫様に憧れてたの。王子様に守ってもらって、結ばれて…そんなロマンチックなことを考えてるような子どもだったの」
「素敵じゃない」
「ありがとう。でもね、その時気づいたんだ。私は、お姫様になれないんじゃないかって。男の子よりもかっこいい私なんて、王子様に守ってもらえないって」
お姫様はか弱くて、きっと戦うことなんてできなくて。
だから、王子様はお姫様を守るんだ。
でも、私は……。
「それで、やめたの。なんの未練もなくすっぱりと。そんな不純な理由なの」
「そんなことない。紗南が悩んで決めた結果でしょう?王子様に守られたいって思うことはおかしくないよ」
「美由紀…」
「私だって、男の子にちゃんと女の子扱いしてもらいたいって思うし、王子様に憧れた時だってあるもん!」
美由紀が力強く言う。
私はそれが嬉しくて笑う。
もっと早くに言えばよかった。
「ありがとう、美由紀」