プリンセス☆ロード
「俺の両親は、結構放任な親でさ、好きなように生きればいいって親だったから何も言わなかったけど、カノンの親にはよく怒鳴られてた。俺がカノンと仲良かったからだと思う」
「うん…」
「よくぶつかって、トラブルになった。あの日も…。いつもみたいに怒鳴られてて。でも、その日俺、なんだかイライラしてて言い返しちゃったんだよ」
「うん」
「それで、止まんなくなって、ケンカしたまま飛び出したんだ。村のはずれまで行って、しばらくイライラが収まるのを待ってた」
少しずつ、声のトーンが落ちていく。
初めは笑顔も見えていたのが、その笑顔も消える。
辛い過去、なんだろう…。
「そしたら、村の方がなんだか騒がしいのに気付いて、ようやく重い腰を上げて村に戻ったんだ。…そこにはもう村の跡形も残ってなかった。聞こえてた騒がしさは悪魔が引き上げていくときのものだったんだ」
「…っ!」
「地獄絵図だったよ。あちこちで知ってる顔が血まみれで倒れてた。あっちでは家が燃えていて、こっちでは半壊になった家とか、荒らされた田んぼとか」
それは、なんて残酷な景色だろう。
さっきまで活気づいていた村が一瞬にして見るも無残な姿に変わってしまったのだから。
「カノンの家も、もう跡形も残っていなかった。…両親の、さっきまでケンカしていた村長のカノンの父親の死体を見つけた…自分ちでは俺の家族の…」
「っ!!」
「それからは、あまり覚えていないんだ…」
気づけばポロポロと泣いていた。
あんまりだ。
きっと、私には想像もできないほどの残酷な光景だっただろう。
大切な人たちが、いなくなる。
そんなの、耐えられるわけがない。
「気づけば、俺はムーン王国の城まで行っていた。王様に、どうして助けに来なかったのかと怒鳴りこんだんだ。俺が向かう道すがらにもムーン王国の騎士たちとはすれ違わなかった。あれだけの騒ぎに気付かないはずがないのに」
「どうして…?」
「そこで言われたんだ。他の町や村、ましてやこの城に被害が飛び火したらどうするんだ、と。お前たちが犠牲になれば、救われる命はあるのだから、役に立てたと誇りに思え…と」
「そんな…!」
そんなひどい話があってたまるか。
他の町、村の人のために犠牲になることが美徳だと?
自分たちが襲われるのが怖いから、助けになんて行かない?