プリンセス☆ロード
「…剣を下ろせ」
「王様…」
「ルネス王国と敵対するのは本意ではない」
王は、何の感情も見せず淡々とそう言う。
私がぶつけた罵声にすらなんの感情も抱いていないようだった。
悔しくて、涙がにじむ。
泣いたら負けだ、そう思うのに。
ガシガシと溢れる涙を拭う。
「…伝説の姫、か。大それた響きだが、この者に本当にそのような力があるのか?」
王が顎を手で撫でながら、私を品定めするように眺める。
「伝説の姫、救いの姫、と騒ぎ立てられ、その気になっているようだがな、お前に何の力がある?ん?お前に国が守れるか?この世界が守れるか?いい気になるなよ」
「いくら王様でも紗南を愚弄することは許しません!」
「忠告しておるのだ。姫という称号をもらう以上、それに見合った仕事はしてもらわないと、ルネス王国も救われんだろう」
遊びではないのだ、と。
そんなことわかってる。
私に、皆がどれだけ期待しているか。
私を側においてくれる理由には、やっぱり私が言い伝えられている救いの姫だからっていうのもあること。
でも、私にはそんな力、ないってことも。
皆の期待に応えられる力なんてないってこと。
ネックレスを少し使いこなせるようになったからといってそんなもの、なんの役にも立たないかもしれないこと。
「わかってる。そんなこと…」
「覚悟はあるということか?」
「…覚悟」
「自分の命を捨ててもこの世界を守る、覚悟だよ」
命を捨てる覚悟。
「なにを!」
「わからない。でも…、もしみんなに危険が及んだ時に、私にできることがあるなら。それで、私がどうなっても、助けたいって思う。それくらいの覚悟は、あります」
「…そうか。見ものだな。この先そうなったとき、お前はどうするのか。その言葉通り動くのか、それとも、逃げるか…」
王は意地悪く笑うと立ち上がり、そのまま出ていってしまった。