プリンセス☆ロード
医者の言うとおり、紗南はその夜高熱にうなされた。
苦しそうに顔をゆがませ、息も荒くとてもしんどそうだ。
「紗南ちゃん…しっかり!」
「氷をもらってきます」
「紗南、大丈夫だからな!」
紗南を励ますように声をかけながら看病をする。
汗を細目に拭きとり、額のタオルを替える。
それくらいしかできない自分たちに嫌気がさす。
できることなら代わってやりたいと誰しもが思った。
しばらくすると紗南は落ち着き、静かな寝息を立て眠り始めた。
まだ熱はあるが、一時よりは下がっていた。
ホッとした一行は、同じ部屋の中でウトウトとし始め、眠りに落ちた。
一人レンだけは、紗南の側に座り紗南をじっと見つめる。
そっと紗南の手を取り握りしめる。
もう誰も大切に思わないと決めていた。
あんな思いをするくらいなら。
紗南の事も、仕事として守っていたつもりだった。
特別な感情なんて、抱かない。
自分が今でも大切に思ているのは、ユリアだけなのだから。
守れなかったユリア。
ユリアを裏切ることはできない。
一生、その罪を償い続けなければいけない。
それなのに、自分の中で紗南の存在が大きくなっていっているのがわかった。
いつの間にか、欠くことのできない存在になりつつあることに気づいていた。
それはほかの騎士たちにとってもそうだ。
紗南の笑顔に、救われていた自分。
紗南の存在に、どんどん依存していっていた。
守りたいと思い、守ってやると豪語したくせに。
守られたのは、自分だった。