プリンセス☆ロード
「それを、紗南さんになんと頼まれ、いくらかわいそうに思ったとしても、外に連れ出るべきではなかった。決してしてはいけない行動だったんです」
「でも…」
「現に、あなたは恐ろしい思いをしたでしょう。命は助かったとはいえ、心に負った傷は、計り知れないでしょう。トラウマになるほど…違いますか?」
ソウシの言葉が突き刺さる。
確かに、今でも震えが止まらないほど、怖くて、怖くて、泣き叫びたいくらい。
あんな化け物、生まれて初めて見たし、あんなものがいるなんて思ってもみなかった。
「王から、あなたが生きていた世界には、あのようなものは存在しないのだと聞きました。ですから、どのように説明し、理解を得、少しでも恐怖のないようにするにはと、思案していたんです。ですから、外に出ることも少しの間禁じさせていただいていました」
「いくら、言葉で説明しても、目の当たりにすれば恐怖するのは当然だからな。でも、少しでもそれが軽減できるように説明の仕方を考えてたんだ」
「そう、だったの…」
ソウシの言葉に付け足すようにリュウも言葉を繋ぐ。
だから、“危険”って言葉で、それ以上の事を教えてくれなかったのね。
そうだ。
この世界の事を受け入れるのだって時間がかかったんだもの。
あんな化け物が生きているんだって、言葉で言われたからといってすんなり受け入れられるはずがない。
「でも、ミナトの軽率な行動で、説明もなく出会うだけじゃなく、危険な目にまで合わせてしまったんだ。俺たちからも、謝らなくてはいけない」
「謝るだなんて…」
「感じずにすんでいたはずの恐怖を植え付けてしまい、申し訳ございませんでした」
深々と、ソウシとリュウに頭を下げられ戸惑う。
それが、きっと騎士としてのけじめなのだろうと、なにも言わず受け入れた。
「…紗南ちゃん。本当に、ごめん。…本当に、すいませんでした」
ミナトが、力なくそう言って頭を下げる。
胸が痛い。
なんで、こんなことになってしまったんだろう。
私のせいで。
皆を傷つけた。