プリンセス☆ロード
通路を進んだ先に広がるデスクと本棚。
その一番端のデスクにレンの姿を見つけた。
一心に文献を開いて読んでいる。
「…あ、あの…」
おずおずと声をかけるが、出てきた言葉は思いのほか小さく、レンに届かない。
かなり、緊張してしまっているのが自分でもわかった。
「あの、レン…」
先ほどより少し大きめの声で呼びかけると、レンが顔を上げ振り向いた。
「…どうした。こんなところに来るなんて珍しいな」
「あ、うん…あの…」
「身体はもういいのか?」
「え?」
「医者の話では、傷はそこまで深くないと言っていたが。もう歩き回って平気なのか」
読んでいた本を本棚に戻しながらレンがそう言った。
また、厳しく説教でも受けることを覚悟していただけに反応に困る。
「えと。うん…。少しズキズキするけど、もう平気…」
「そうか。明日の任務は俺が代わりに行う。お前は休んでおけ」
「え、そんな!俺、できます!レンに代わりになんて…!」
一番隊になったら同等だと、口調も砕けるように言われたため呼び捨ての上にため口だが、レンはミナトよりもずっと先輩騎士だ。
そのうえ、レンは一番隊をまとめる所謂隊長の任も任されているほどの上の騎士。
そんなレンに自分の代わりをさせるなんて、できなかった。
「無理をしてそのケガが長引いても困る」
「…でも」
「怪我が治ったら、嫌でも働いてもらうからな。お前の力は、頼りにしているんだ」
そう言ってミナトの頭をポンとたたくとそのままその部屋から出ていこうと歩き出す。
それが、レンの優しさなんだと気付く。
ミナトは、自分の過ちをもう気づいて、後悔していることをレンはちゃんとわかっていた。
だからこそ、今度は責めるのではなく、励ますことでミナトを元気づけようとしていた。
見捨てたわけじゃない。
ミナトに期待し、成長してほしいと願う、まるで親心のようなものだった。