そのとき僕は
2、夢幻は散って
言ってみれば、僕は暇だった。
だって大学生で2回生から3回生に上がったばかり、必修の単位はすでに取ってあるし、ゼミが始まるにはまだ早い、それに就活だって先の話だった。
大学でクラブ活動をしているでもないし、入っているのはイベントサークルという出ても出なくても何の問題もないもの、そうくりゃ、バイトまでの空いた時間に特にやることすらない学生なのだった。
そして、正直に言うと、気になっていたのだ。
昨日のこと。桜吹雪とその合間に見た謎の少女(だったよな?)。あの少年のような透明感と、華奢な首から肩の線、灰色の瞳が何度となく出てきたのだ。
気になっていた。すごく、すご~く、気になっていた。
だってだって、もし本当に幽霊だったらどうする?先輩の言う通りだったら?それだったら何かしなきゃならないんじゃない?などと考えてしまって、目が覚めるのも早かった。
・・・超迷惑。
だから暇に理由をつけて、翌日も行ったのだった。
昨日の桜並木の遊歩道へ。
細かく言えば、そこの途中から見える、山すそにぽっかりと空いたような場所にある大きな桜の木のところに。
「―――――――あ」
自分の口から声が漏れたのが判って、思わずパッと手で口元を覆った。