そのとき僕は
無言の彼女にそう問いかける。因みに、僕のは中吉だった。何やら難しそうな歌が書いてあって、その下にはそれぞれの運勢が続いていく。
病気―――時間はかかるが回復 失せ物―――出でず 待ち人―――来ず 転居―――やめるが良し 縁談―――まとまらず 商売―――時期悪し 旅行―――時期を改めよ 勉学―――よし
・・・って、全然良くないじゃん。何だこりゃ。おいおい、本当に中吉か?勉学はよしだけど、僕受験生じゃないしな。
憮然として手の中のおみくじを見ていると、ねえ、と呼ばれる。
「あたし、末吉だった。そっちは?」
彼女はそう言いながら既におみくじを細く細く折っている。
「中吉。でもいい事が一つも書いてないんだけど」
「何よそれ」
「だって」
僕のを見せてとかっさらい、隅々まで見てまた笑っていた。本当ね、って。これじゃああたしが引いた末吉の方がマシじゃないのって。
「・・・結果が悪くないなら、何でもっておかないんだ?」
彼女はおみくじを細い桜の枝にくくりつけている。それをじっと見ながら、風に消されそうな小さな声で言った。
「――――――――欲しい言葉が、書いてなかったから・・・」