初恋ピエロット
三人目のピエロ
小鳥遊慧愛は椅子に縛り付けられていた。
いつのまにか制服ではなく黒のドレスを着せられている。
しかも染めていた髪は元の黒に戻されている。
小鳥遊慧愛は、おもむろに目を開けた。
久方ぶりの光が目にいたい。
「起きたのか、慧愛」
ふいに声がして後ろに首を曲げようとしたができなかった。
「誰だ、お前」
それでも、気丈に振る舞う。
相手に弱みを付け込まれてはいけないから。
そんな小鳥遊慧愛の目にまた白い布が巻きつけられる。
これでまた、光は奪われた。
「君の名前を教えてよ」
また、さきほどの声が聞こえた。
「答えるつもりはない。それより、質問に答えろ。お前は、誰だ」
光を奪われてもなお、気丈な小鳥遊慧愛に彼は舌打ちを打つ。
「僕のことはどうでもいい。僕は、君に興味がある。君が僕のいいなりにならないと、今僕たちが捕まえてる君の仲間たちがいなくなっちゃうよ?」
彼は、椅子の後ろから、小鳥遊慧愛の耳元でそっとささやく。
体が一瞬だけ震えた。
「…最低だな、お前」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そう言いながら、彼は小鳥遊慧愛の髪をいじり始める。
「それで、君の名前は?」
髪にリボンを結びながら問いかける。
「……千原、恵」
彼はまたも舌打ちを打つ。
次は、ポケットからナイフを取り出すと小鳥遊慧愛の首元にそうようにして当てる。
「違うだろ?僕は、君の本当の名前が聞きたいんだ」
小鳥遊慧愛は、小刻みに震えだす。やっぱり怖いのか。
まだ、ナイフのトラウマは消えてないのか。
「………小鳥遊、慧愛。」
「やっと本当の名前を自分で言ったな。僕の名は蓮。蓮だ。」
彼は自分の名を名乗ると、小鳥遊慧愛の拘束を全て外していく。
ただ一つ、目隠し以外は。
「こんなことをして、悪かった。悪気はなかった」
彼はそういい、首元にチョーカーをつける。
「目隠しだけはとらないでくれ。顔を見られたくない」
彼は小鳥遊慧愛をベッドまで運ぶ。
小鳥遊慧愛は、まるで力が入らないかのようにおとなしい。
また、悲しみのことを思い出したのだろう。
「僕の話を、してもいいか」
彼はおもむろにそうつぶやく。
小鳥遊慧愛がうなずいたように見えたので、話し出す。
「僕は、記憶がないんだ。」
「四年前、からだ。気づけば、暴力団の中にいた。そこの組長が道端で倒れていた僕を拾ってくれたそうだ。記憶喪失になるまえ、僕はある人の名前を夢の中でずっと読んでいたそうだ。」
「その人の名は、小鳥遊慧愛」
宮とイルは倉庫の燃え跡の横で話していた。
広場には、オーギュスト、暴力団、道化師セレネの全てのメンバーが集まり、総数百人はゆうに超えている。
「俺の本当の名前は、野田太一だ」
そう言って、イル、もとい、野田太一は宮に向かって、手を差し出した。
その手を、宮はとり、自分も名乗る。
「俺の名は、××××だ。」
そう言って、二人は視線を交わし、手を離した。
その目には、さきほどまでの敵対心は消えた。小鳥遊慧愛からのメールより一時間。彼らふたりは腹を割って話し合い、ついに協力することを決めたのだ。
「野田、俺は先に行く。お前は、後からバレないようにくるんだ」
「わかった。小鳥遊を、頼む」
「言われるまでもない」
お互い、笑いながらその場を別れ、宮はバイクに飛び乗った。
「放せ!貴様、記憶喪失だなんて嘘だろう!!!」
私は、今にものしかかろうとしてくる蓮を振り払う。
「嘘にきまってるじゃないか。僕のことを信じたんだ?かーわいい」
そう言って、いとも簡単にまた縛り上げられてしまう。
「っ」
なんで、誰も来ないんだ!?メールを気づいていないのか!?
誰でもいい、だから、早く、早く、助けて。
「僕と一緒に、生きたくはないのか?」
蓮は、私を手を縛ったままドレスごと抱き上げる。
部屋の片隅にあった螺旋階段を上り始める。
「当たり前だッ!お前みたいな、奴と生きるほどあたしは暇じゃない」
身をよじっても、逃げられない。
あの時と同じように。
「まあ、それがいつまで続くか見ものだね」
そう、蓮は笑い、螺旋階段は終わりを迎え、屋上にたどり着いた。
「お前、何するつもりだ」
私は、できる限り睨みながら言う。
「ん?君をさらって逃げるつもりだけど?」
そう平然と言う蓮に嫌気が差してきた瞬間、宮の叫び声が聞こえた。
私の本当の名前を、叫んでいた。
「あーあ。王子様のお出ましか。」
そう蓮はつぶやき、屋上の淵まで行って下を眺める。
またもや、私の首筋にナイフが当てられた。
「聞こえるか!!宮!!」
宮は、こちらに気づき、顔をこわらばせる。
やはり、気づいたのか。
「てめぇ、何してやがる!死んで、なかったのか!!??」
叫びが、絶叫に変わる。
「なんのことだか。それより、慧愛はもらっていくよ?」
「!」
体を動かすことすら、許されない。
そのとき、宮の後ろに人影が現れた。
「小鳥遊!!!」
その声に、思わず涙が頬に落ちた。
それを見て、連が舌打ちをした。
いつのまにか制服ではなく黒のドレスを着せられている。
しかも染めていた髪は元の黒に戻されている。
小鳥遊慧愛は、おもむろに目を開けた。
久方ぶりの光が目にいたい。
「起きたのか、慧愛」
ふいに声がして後ろに首を曲げようとしたができなかった。
「誰だ、お前」
それでも、気丈に振る舞う。
相手に弱みを付け込まれてはいけないから。
そんな小鳥遊慧愛の目にまた白い布が巻きつけられる。
これでまた、光は奪われた。
「君の名前を教えてよ」
また、さきほどの声が聞こえた。
「答えるつもりはない。それより、質問に答えろ。お前は、誰だ」
光を奪われてもなお、気丈な小鳥遊慧愛に彼は舌打ちを打つ。
「僕のことはどうでもいい。僕は、君に興味がある。君が僕のいいなりにならないと、今僕たちが捕まえてる君の仲間たちがいなくなっちゃうよ?」
彼は、椅子の後ろから、小鳥遊慧愛の耳元でそっとささやく。
体が一瞬だけ震えた。
「…最低だな、お前」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そう言いながら、彼は小鳥遊慧愛の髪をいじり始める。
「それで、君の名前は?」
髪にリボンを結びながら問いかける。
「……千原、恵」
彼はまたも舌打ちを打つ。
次は、ポケットからナイフを取り出すと小鳥遊慧愛の首元にそうようにして当てる。
「違うだろ?僕は、君の本当の名前が聞きたいんだ」
小鳥遊慧愛は、小刻みに震えだす。やっぱり怖いのか。
まだ、ナイフのトラウマは消えてないのか。
「………小鳥遊、慧愛。」
「やっと本当の名前を自分で言ったな。僕の名は蓮。蓮だ。」
彼は自分の名を名乗ると、小鳥遊慧愛の拘束を全て外していく。
ただ一つ、目隠し以外は。
「こんなことをして、悪かった。悪気はなかった」
彼はそういい、首元にチョーカーをつける。
「目隠しだけはとらないでくれ。顔を見られたくない」
彼は小鳥遊慧愛をベッドまで運ぶ。
小鳥遊慧愛は、まるで力が入らないかのようにおとなしい。
また、悲しみのことを思い出したのだろう。
「僕の話を、してもいいか」
彼はおもむろにそうつぶやく。
小鳥遊慧愛がうなずいたように見えたので、話し出す。
「僕は、記憶がないんだ。」
「四年前、からだ。気づけば、暴力団の中にいた。そこの組長が道端で倒れていた僕を拾ってくれたそうだ。記憶喪失になるまえ、僕はある人の名前を夢の中でずっと読んでいたそうだ。」
「その人の名は、小鳥遊慧愛」
宮とイルは倉庫の燃え跡の横で話していた。
広場には、オーギュスト、暴力団、道化師セレネの全てのメンバーが集まり、総数百人はゆうに超えている。
「俺の本当の名前は、野田太一だ」
そう言って、イル、もとい、野田太一は宮に向かって、手を差し出した。
その手を、宮はとり、自分も名乗る。
「俺の名は、××××だ。」
そう言って、二人は視線を交わし、手を離した。
その目には、さきほどまでの敵対心は消えた。小鳥遊慧愛からのメールより一時間。彼らふたりは腹を割って話し合い、ついに協力することを決めたのだ。
「野田、俺は先に行く。お前は、後からバレないようにくるんだ」
「わかった。小鳥遊を、頼む」
「言われるまでもない」
お互い、笑いながらその場を別れ、宮はバイクに飛び乗った。
「放せ!貴様、記憶喪失だなんて嘘だろう!!!」
私は、今にものしかかろうとしてくる蓮を振り払う。
「嘘にきまってるじゃないか。僕のことを信じたんだ?かーわいい」
そう言って、いとも簡単にまた縛り上げられてしまう。
「っ」
なんで、誰も来ないんだ!?メールを気づいていないのか!?
誰でもいい、だから、早く、早く、助けて。
「僕と一緒に、生きたくはないのか?」
蓮は、私を手を縛ったままドレスごと抱き上げる。
部屋の片隅にあった螺旋階段を上り始める。
「当たり前だッ!お前みたいな、奴と生きるほどあたしは暇じゃない」
身をよじっても、逃げられない。
あの時と同じように。
「まあ、それがいつまで続くか見ものだね」
そう、蓮は笑い、螺旋階段は終わりを迎え、屋上にたどり着いた。
「お前、何するつもりだ」
私は、できる限り睨みながら言う。
「ん?君をさらって逃げるつもりだけど?」
そう平然と言う蓮に嫌気が差してきた瞬間、宮の叫び声が聞こえた。
私の本当の名前を、叫んでいた。
「あーあ。王子様のお出ましか。」
そう蓮はつぶやき、屋上の淵まで行って下を眺める。
またもや、私の首筋にナイフが当てられた。
「聞こえるか!!宮!!」
宮は、こちらに気づき、顔をこわらばせる。
やはり、気づいたのか。
「てめぇ、何してやがる!死んで、なかったのか!!??」
叫びが、絶叫に変わる。
「なんのことだか。それより、慧愛はもらっていくよ?」
「!」
体を動かすことすら、許されない。
そのとき、宮の後ろに人影が現れた。
「小鳥遊!!!」
その声に、思わず涙が頬に落ちた。
それを見て、連が舌打ちをした。