戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
鍛錬場に、刃と刃のぶつかり合う音が響く。

火花散る攻防。

なのにそれはまるで、よくできた音楽のようであった。

「ぬうううう…!」

壁際に追い詰められていた乙女であったが、槍を捌きながら少しずつ押し返してくる。

俺が後退せざるを得ないほどの圧力。

少女とはいえ、彼女もこの地に名を轟かせる英雄だ。

その気迫は凄まじいものであった。

やがて。

「てぇいっ!!」

気合の声と共に、乙女は俺の槍を横に弾いた!

「もらった!!」

隙を見逃さず、一気に剣を振り下ろす乙女!

「させるか!」

俺も弾かれた反動を利して体を反転させ、槍を突き出す!!

両者の必殺の一撃は。

「……」

「……」

あと一寸という所で止められていた。

乙女の剣は俺の脳天寸前で、俺の槍の穂先は乙女の眉間寸前で止められている。

「…紅、貴方の勝ちか?」

「いや、相討ちだな」

俺も乙女も、互いの得物を引く。

「やはり貴方が槍を持っては敵わぬな」

「なんの。間合いの広い槍を相手にここまで攻め込まれたのだ。相変わらずの剣の冴えだ」

お互いに相手の実力に感服する。

平穏な日々が続いていたが、戦乙女の雷名が地に墜ちた訳ではなさそうだ。

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