戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~

「槍ならば貴方の専門だろう。ここは剣士である私よりも槍兵である貴方の意見を聞きたい」

乙女はそう言って、目の前に置いてある魔槍とやらに視線を向ける。

「……」

俺は無言のまま歩み寄り、無造作に槍を手に取った。

…ハッと、乙女が息を呑むのが聞こえた。

「どうした?まさか触れた程度で呪われる、とでも思っていたか?」

「そ、そのような筈はなかろう!」

図星だったのか、乙女は声を荒げた。

呪い、祟り、怨念。

この手の話を恐れる辺り、やはり乙女も娘という訳か。

内心苦笑いしつつ、俺は手にした魔槍に気を向けた。

「……」

成程。

確かに魔槍と呼ぶに相応しいかもしれぬ。

あの武器商の言っていた、三つの国を滅ぼしたというのが、この槍の仕業なのかどうかはわからない。

だがこの槍には、確かにそこらの兵が使うありふれた槍にはない、凄みのようなものが感じられた。

…ひとしきり振り回し、その使い心地、重さ、空を斬る音を確かめてみる。

そうした上で槍を止め、もう一度改めて魔槍を吟味した。

…呪われているのか、不吉な力が宿っているのか。

魔術師でも聖職者でもない俺には理解できぬ。

しかし、この槍が名工によって鍛え上げられた、相当な業物である事はわかった。

もう数百年、いや数十年も経てば、この槍は真に『魔槍』と呼ばれる武具となるだろう。

伝説の宝具として、語り継がれるようになるだろう。

それ程の逸品である事は間違いなかった。

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