戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
俺の言葉に、乙女は渋々了承したようだった。

「だが紅、ひとつだけ約束してくれ」

乙女は心底心配そうに俺を見つめる。

「万が一戦いに赴くような事があったとしても、その槍は使わないでくれ。戦場で何か不吉な事が起これば、それは命取りにもなりかねん」

「お前ほどの騎士がおかしな事を言うのだな」

俺は笑う。

…戦場など、不吉な事しか転がっていない。

死、負傷、全滅、敗北。

これ以上の不吉な事などない。

それにそんな不吉がこの身に降りかかるとすれば、それは魔槍のせいではなく、己の実力と運がなかったからだ。

そのような事で呪いだ祟りだと騒いでいたら、この世にある武器の殆どは呪われた武具という事になる。

「騎士が愛用の武器を戦場に持ってゆくのは当然の事だろう。その願いは聞き遂げられんな。それとも何か?」

俺は意地悪く微笑む。

「お前は今日より俺の相棒となるこの槍を置いて、丸腰で戦場に赴けと言うのか?その方が余程不吉な事が起こりそうだ」

「……!」

完全に俺に論破され、乙女は悔しげに唇を噛む。

「す、好きにしろ!全く…せっかく私が心配して忠告してやったというのに、この捻くれ者め」

「心配無用」

俺はニヤリと笑った。

「案外この魔槍、俺の為に存分に働いてくれるやも知れぬ」


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