戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~

乙女

それから三日ほどは平穏な、本当になんでもない日々だった。

王宮は相変わらず私が逃げたの逃げないので騒がしい日々を送っていたし。

国内も、いつもと同じ穏やかな日々。

少し高い位置に建てられた城から見える城下町の景色は、白壁に赤い屋根の建物が連なる、私が大好きないつもの街並みで。

わざわざ街に下りて行かずとも、その活気は手にとるようにわかった。

商店の立ち並ぶ一角では威勢のいい声が響き、赤煉瓦の敷き詰められた通りには笑顔の人々が行き交い、街の中央にある戦女神の像が建てられた噴水広場には、恋人同士らしき男女が寄り添って語り合っている。

平和とはかくあるべき、という光景。

そこに魔槍の不吉など見る影もなく。

私もどこか安心していたのだ。

やはり魔槍の呪いなど、ただの迷信。

そもそも魔槍とて人の造りしものだ。

たかだか一人の人間の造った武具に、三つもの国を呪う力などある筈もない。

もし本当に槍がかかわった事で国が滅びたのが事実だとしても、それは槍のせいではなく、その国に起こった戦のせいだ。

たった一本の槍で国が滅びるなど有り得ない。

だから女神国も大丈夫だ。

私はそう信じる事にした。







これから起きる不吉など、知る由もなく。




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