戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
それに、と。

紅は解せない部分を口にする。

「お前が来る前に遺体を調べたが…あの傷口は恐らく剣ではない。いや、刃ですらないかも知れぬ。見た事もないような切り口だった」

刃ではない?

何か未知の力で、あの兵は首を落とされたというのか。

「……」

口にしたくはない言葉が、頭をよぎる。

そんな私の言葉を代弁するかのように。

「もしや…先日舞い込んできた…魔槍の…」

「馬鹿な事を言うな!」

女王である私の前という事で気にしたのだろう。

一人の女神兵が私と同じ考えを口にし、もう一人の兵がそれをたしなめた。

だが。

「そう考える気持ちもわからなくもない」

私はそう呟いた。

女神兵ほどの優秀な者が、恐らくはほぼ無抵抗のままで、たった一撃でやられてしまった。

しかも傷は、紅でさえ見た事もないような切り口。

「魔槍の呪い…かもしれぬな…」

そんな馬鹿げた事さえ、或いは…と思わせるような、奇怪な事件だった。


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