戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
鍛錬が終わる頃。

俺が汗を拭っていると、鍛錬の間の入り口に乙女の姿があった。

「何か用か」

「なに、兵達の仕上がり具合をな」

乙女は微笑む。

「頼もしいな。これほどの精強な兵が、我が国を守ってくれているのだと思うと」

「ああ」

鍛錬を終えて談笑する兵達を見ながら、俺も頷いた。

「彼らには守ろうとする意志がある。誰に命じられた訳でもない、己の意志で守る為に戦おうとしている。どんなに剣腕が卓越していようと、望まぬ戦いでは力は発揮できぬ。そういう意味で、国や大切な者を守る戦いをする限り、この国は敗北を喫する事はない」

我ながらいつになく多弁なせいだろうか。

「……」

乙女が俺の横顔をじっと見ていた。

「…なんだ?」

「…ふふ」

乙女はクスッと笑った。

「貴方も変わったなと思ってな…勝つ為には手段を選ばなかった自由騎士の頃とは、言う事も考え方もまるで違う」

「…そんな事はない。今だって勝利に執着しているし、もし敗北するような事があれば、黒の旅団に寝返っても構わんと思っている」

「貴方はもうそんな事はせぬよ」

一点の疑いすら向けず、乙女は笑顔を見せた。

「何より貴方は、この国が…女神兵が敗北するなどとは思っておらぬだろう?」

「……」

図星だったが、認めるのは悔しいので無言のままでいた。


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