戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
「待て!全軍停止!」

このまま進軍しては危険だ。

私は進軍を止め、注意深く辺りを見回す。

よく目を凝らすと…「!」

木々の間…ちょうど馬にまたがった兵の高さに合わせて、黒く塗られたロープが結び付けられていた。

成程、これに引っかかって、兵達は落馬したのか。

暗い闇夜の森の中では、このロープに気づく事もあるまい。

「小賢しい真似を…!」

私は唇を噛み締める。

黒の旅団の仕掛けた罠に違いない。

しかし、奴らの仕掛けた罠はこれだけではなかった。

「ぎゃあっ!!」

突然、兵の悲鳴が聞こえる。

しかも一人ではない。

次々と森に響く悲鳴。

気がつくと、黒く塗られた矢を受けた女神兵達が倒れている。

「気をつけろ!森の中に奴ら潜んでいるぞ!!」

私は指示を出しながら、密集陣形を組んだ。

…ご丁寧に黒い矢とは。

これも暗闇の中では目視する事すら難しい。

更に矢にばかり気をとられていると。

「ぐあっ!!」

木陰に潜んでいたのだろうか。

突然背後から現れた敵兵が、槍で女神兵の一人を貫く!!

「くそっ…しまった…」

今になって気づくとは、我ながら何と愚かな…。

私達は敵兵を追い詰めるつもりが、まんまと敵の罠の中に飛び込んでしまったのだ。

黒の旅団は決して私達の目の前に姿を現す事無く、背後から、木陰から、闇の中から、私達を次々と攻撃してくる。

「くそ…これが騎士のやる事か…真っ向正面から戦いを挑んで来い!!卑怯者め!!」

私の声が、闇夜の森に響いた。

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