戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
くそ、まただ。

女神国王宮付武術指南役。

女神兵の選抜を一任された、本人も私に匹敵するほどの使い手である。

この男がなかなかに手ごわく、いつも私が愛馬で脱出するのを阻止される。

だが、三度目の正直。

今回は愛馬もかなりの速度で走っている。

最早止められまい。

そう思った私の目の前で。

「!!!!」

武術指南役は、私と愛馬を飛び越えるほどの高い跳躍を見せつけた。







彼の象徴でもある、真紅の外套をなびかせながら。





彼は空中で華麗に一回転すると、そのまま愛馬の背…私の乗っている背後へと軽く舞い降りる。

走っている馬の背に飛び乗るとは、信じられない芸当だ。

「懲りぬ奴だな、お前は」

私を背後から抱きしめるような形で、彼は愛馬の手綱を引き絞る。

鋭く一回いなないて、愛馬は急停止の命令に従った。

「は、放せ!」

背後からの彼の吐息に胸の鼓動が高鳴り、私は彼を押しのける。

そして、キッと睨んでやった。

くそ、この男からはどうしても逃げられないな。

「忌々しい奴だな、紅…!」


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