戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
声に気づき、森の方を見る。

…森の中から出てきたのは、今まで潜んでいた黒の旅団の兵士達。

そして…女だった。

「お前は…」

私はその女に見覚えがあった。

…数日前に我が国に魔槍を持ってきた、あの武器商の女性だ。

「そうか…お前も黒の旅団だったのか…」

…天には満月。

そしてその女の手には…三日月。

そう形容したくなるような、身の丈以上の巨大な鎌を女は持っていた。

巨大な鎌と、身につけている黒い胸当て、洋袴。

全身黒ずくめ。

その姿に、誰もが同じものを連想したであろう。

「小娘、その男をこちらに渡せ。そいつは私の同胞である漆黒を殺した。私自らの手で止めを刺さねば気が済まぬ」

「断る」

紅を衛生兵に任せ、私は剣を片手に立ち上がった。

「紅は私の仲間だ。その仲間を、誰が敵に渡すものか」

「ほぅ…」

女は妖艶な笑みを浮かべた。

「黒の旅団頭目であるこの私…死神に逆らうか」

その出で立ち通りの名…死神は、鎌をユラリと構える。

「ならば同胞の命を奪われたこの苛立ちは、小娘…貴様が受けてくれるのか?」

「小娘ではない」

私は剣を構える。

「女神国女王、戦乙女だ」




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