戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
受け太刀する腕が痺れる。

何せあれ程の重量の鎌。

加えて死神の腕力も相当なものだ。

何度も受けていれば、だんだん力が入らなくなってくる。

「他愛もない」

巨大な刃が、私の頭目掛けて振り下ろされる!!

「くっ!!」

私は剣を横に構えてその刃を受け止める!!

…剣と鎌の違いはあるが、鍔迫り合いに似た形となった。

「よく持ち堪えている方か?一応流石は戦乙女と言っておこう」

ギリギリと刃の擦れ合う音の中、死神がまたも妖艶な笑みを浮かべる。

私は笑顔など浮かべる余裕はない。

気を抜けば押し切られて、頭から両断されてしまいそうだった。

…夜盗紛いの黒の旅団に、これ程の使い手がいたとは…。

「それだけの腕を持ちながら…なぜ騎士としての誇りを捨てた…?そなたならば、英雄と呼ばれるほどの力を持っているであろうに…!!」

「英雄?ハッ、笑わせる」

死神は私の言葉を一笑に付した。

「どんなに崇められようと、どんなに誇りを守ろうと、死を目の前にすればどんな英雄でも見苦しくあがく。誇りも矜持も捨て、卑怯な手を使って生き延びようとするさ。どんな奴だって同じだ。なぜ私達だけが責められる必要がある?」

死神の鎌が、更に押し付けられてくる。

「くぅ…!!」

私は地面に片膝をつき、全身に力を込めて耐える。

「人間など、一皮剥けば皆ケダモノのような奴ばかりさ。自分の保身の為ならば裏切り、仲間を売り、手段を選ばぬ。綺麗事の騎士道など語る、貴様らの方がおかしいのさ」

「…!!」

最早反論する余力もない。

死神の刃が、眉間ギリギリまで近づいてくる。

その時。

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