戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
紅。
勿論、本名でないし、私は彼の本名は知らない。
名は知らぬものの、彼は先の戦で信頼するに足る戦働きをしてくれた。
『女神国には戦女神と紅の旋風がついている』
その『紅の旋風』の方が彼だ。
紅、というのは二つ名に過ぎない。
そして彼を形容する言葉は他にも数多く存在する。
疾風、旋風、魔風。
いずれにせよ、その赤い風が通った後は、何もかもを斬り刻み、吹き飛ばし、屍の山を築く。
その強さから、皆は畏怖と尊敬の念を込め、彼を紅と呼ぶのだ。
…大国との戦の後、小国を去ろうとする彼を引き止めて、私は彼と共に女神国を興す事にした。
気恥ずかしくて本人には告げた事がないが、本当は彼には私の玉座の隣に座って欲しかったのだ。
無論断られるだろうが。
彼は何より自由を求める。
元々彼と邂逅した時、紅が流れ者の自由騎士だった事がその何よりの証だろう。
だが小国を救った英雄に何の役職も与えぬままというのは、私の恩義に報いるという精神に反する。
だから私はこの国に無理矢理紅を引きとめ、半ば強引に『女神国王宮付武術指南役』という役職を与えたのだ。
これが意外に功を奏し、紅に鍛え上げられた女神兵達は、近隣でも類を見ないほどの屈強なる騎士に成長した。
勿論、本名でないし、私は彼の本名は知らない。
名は知らぬものの、彼は先の戦で信頼するに足る戦働きをしてくれた。
『女神国には戦女神と紅の旋風がついている』
その『紅の旋風』の方が彼だ。
紅、というのは二つ名に過ぎない。
そして彼を形容する言葉は他にも数多く存在する。
疾風、旋風、魔風。
いずれにせよ、その赤い風が通った後は、何もかもを斬り刻み、吹き飛ばし、屍の山を築く。
その強さから、皆は畏怖と尊敬の念を込め、彼を紅と呼ぶのだ。
…大国との戦の後、小国を去ろうとする彼を引き止めて、私は彼と共に女神国を興す事にした。
気恥ずかしくて本人には告げた事がないが、本当は彼には私の玉座の隣に座って欲しかったのだ。
無論断られるだろうが。
彼は何より自由を求める。
元々彼と邂逅した時、紅が流れ者の自由騎士だった事がその何よりの証だろう。
だが小国を救った英雄に何の役職も与えぬままというのは、私の恩義に報いるという精神に反する。
だから私はこの国に無理矢理紅を引きとめ、半ば強引に『女神国王宮付武術指南役』という役職を与えたのだ。
これが意外に功を奏し、紅に鍛え上げられた女神兵達は、近隣でも類を見ないほどの屈強なる騎士に成長した。