戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
死神は驚いたように私を見上げる。

「愚弄するのか…貴様」

「まさか。心からそう思っている」

私は死神に微笑みかける。

「戦いの最中、貴女は言った。『殺された漆黒の恨み、思い知るがいい』と…貴女は最後まで、死んでいった同胞の事を気にかけていた。誇りも騎士道も捨て、それでも仲間の事だけは死して尚捨てる事はなかった…見事な騎士としての生き様だった」

「……」

信じられない、といった様子で死神が私を見る。

「…裏切り、謀り、欺瞞に満ちた戦のやり方しか知らぬ私を…騎士と呼ぶのか…?」

「そのような戦術を選んだのも、ひとえに己の仲間の命を尊ぶが故の選択だったのだろう?ならば何を恥じる必要がある。貴女は誇り高き騎士だ。貴女が捨てたと言い張っても、貴女は誰にも恥じる事のない騎士道を貫いた」

「……」

静かに目を閉じる死神。

その表情に、最早憎悪はない。

「成程…敵の死に際にさえ安らぎを運ぶか…貴様が戦乙女と呼ばれる理由…わかったような気がする…」

その言葉が最期だった。

死神は眠るように、苦しむ事なく天国へと旅立っていった。










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