Destiny
空を仰いで深呼吸してから、ゆっくり玄関のドアを開ける。



「ただいま…」



中に入ると、夕食の支度をしていたお母さんが、帰りを待ちわびていたかのように、ダイニングから顔を出した。



「お帰り、亜梨沙。遅かったわねぇ。
どうして電話に出ないの?
買って来てもらいたいものがあったから携帯にかけたのに。」



いつもと変わらないお母さんの姿。


安堵で涙腺は決壊寸前になる。



ダメ。

こんな顔をお母さんに見せたら、心配をかけてしまう。



熱を帯びた瞳を悟られないよう

「ごめんね…」

とだけ言うと、私はお母さんの前を足早に通り過ぎた。
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