ときどき

学力格差を感じつつも、試験明けの放課後って、やっぱりすっきりする。
佐伯くんたち男子はカラオケに行くと騒ぎながら帰っていった。
色々なものを我慢して勉強に取り組んできた諸君も、言うほど自制せず教科書をチラ見してみただけの野郎共も、結果を出した者も、出せなかった者も、味わう開放感はだいたい同じだと思う。

喜び勇んで部活に繰り出す人を見送りながら、私も帰る事にする。
私は高校生では、帰宅部を選ぶ事にしたのだ。
中学の時は卓球部に在籍していたものの、正直私の情熱は死んでいる。授業でちょっと活躍できる程度の実力はあるけど、試合では活躍できなかったし、高校生になると、いきなり運動部って苛烈になるよね？
あの空気は私、無理。

足立くんも渡部さんも帰宅部だし、佐伯くんも意外と学校に残るほどの魅力を感じるものがなかったらしく、毎日遊び歩いているらしい。どっから金でてくるんだろ。
足立くんも渡部さんも放課後になるとさっさと教室から出て行く。渡部さんは、教師になにやら質問でもしているのか途中で職員室に進路をとり、足立くんは昇降口へ向かうのだ。帰宅というものが、学校を出て家の玄関に到着するまでの時間を競う競技であるなら、足立くんは間違いなく我が校の帰宅部エースだろう。

集合時間に謎の緩さがあるらしい某文化部に属する級友とのんびり話をしてから、私はのんびりと家に帰る。休み時間は足立くんや渡部さんと過ごすが、放課後だけは例外なのだ。なんか妙な三人組だよねと級友に指摘されて、私は「でしょ」と応えたが、一瞬後に私も妙だという枠に入っている事に気づいて少ししょげた。