ときどき
ひとりは、穏やかそうな顔をした二十歳前後の男。
ひとりは、小生意気そうな表情の十代前半の少年。
ひとりは、小生意気そうなーーーあれ、待って同じような子が二人いるんだけど。
ひとりは、可愛らしい顔をした小学生の女の子。

ああ、兄妹いんのか。
と、私はポカンとした表情になった。
私は、どうしてその事態を考えつかなかったのだろうか。
足立くんが手に取った食玩を見て、こいつ変な趣味かもとか思ってごめんなさい。

「実里が渡部じゃない女子連れてきたーーーー!」

弟と思しき一人が、人を珍獣かなにかのように指差して怒鳴った。人を指差すなと兄らしき男が押し殺したような声でたしなめた。彼も動揺しているらしい。遠慮がちに視線をこちらに寄越してくる。

「実里、この子、どなた?」
「これ、クラスの奴」

友達って言えや。
お兄様の問いに短く応えた足立くんを睨みつけそうになる。
弟のさっき喋らなかった方が口を開いた。

「うわ、実里が友達連れてくるとか生まれて初めてなんだけど。ちょっと、よしみケーキ持ってきてケーキ!」

女の子の事かと思ったが、その言葉に駆け出したのはお兄様だった。
待って、名前についてはありがちなことだからいいんだけどさ。
なんでこの家のお兄様、弟にこき使われてんの?

「とりあえず、あがれ」
「ああ、いいんだ。お邪魔しますねー。私、浅野弓弦っていいます」
「へー、男みたいな名前」
「弓弦くんって呼んでいい?」

ちょっと待ってね。落ち着くから。
この弟たち、めちゃくちゃウザいな。
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