ときどき
家にくればなんとかなると言っていた意味が分かった。
足立くんは、彼の兄妹が私を接待するだろうと見越した上でここまで水を持たせて私をついてこさせたらしい。

「いや、ごめんねー。うちの生活用品なんか持ってきてもらっちゃって。実里は人の扱い方がよく分かってないみたいで。いや、ごめんねー」
「あー、いいです。ケーキ二個目いただいてるんで」

足立くんの倍ぐらい申し訳なさを持っている兄君の好己さんは、次々とケーキを出してきてくれた。この家は冷蔵庫にケーキが常備してあるのだろうか。

「もうねー、どんどん食べなよ弓弦くん。これ明日来る伯父さん達の分だから」
「えっ!?」
「実里の友達に出したって言ったら母さん怒んないでしょ。俺たち、伯父さん達嫌いだからお菓子だしたくないんだよね」
「食べろ」

双子らしい弟の謙也くんと亨くんがとんでもないことを言い、足立くんも同調した。この家、本当に大丈夫なのかな。末っ子の妹が心配になってくる。

「伯父さん達にはこれを食べてもらえばいいから、弓弦くん、大丈夫」
「これってーーーーこれ?」
「あっ、この人形はあたしの」

絵美ちゃんは、さっき足立くんが買ってきた食玩付きのビスケットを指した。食玩目当てだったらしい。妹もダメだ。かわいいけど、ダメだ。
「いや、ごめんねー」と好己さんがまたぺこぺこした。癖なんだろうな。

「待てよ・・・実里の友達だったら、渡部とも仲いいの、弓弦くん?」
「えーーーまあ、仲はいいんじゃないかな」
「あー、なんか安心したわー!あの人ぜんっぜん友達できねーんだもん!」

謙也くんたちも、渡部さんと仲がいいらしい。でも、その呼び方はないわ。
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