ときどき
「あ、そういえばこの前さ」

私は渡部さんの話を聞いてみようと思い立って、先日渡部さんの押し付けられ仕事を手伝ったときのことを話してみた。
渡部さんの「私賢いから」宣言に驚いた旨を述べても、足立くんの表情は変わらない。

「それは、普段からそうだけど」
「あ、そうだった?」
「おまえ、聞いただろ新学期早々に」
「え?」
「僻まれるんですよ、顔が良いからって」
「・・・・?」

私は記憶の底から新学期はじめの記憶をほじくりだしてみる。
確かにそんなこと言ってたような・・・?でも・・・

「え、顔が良いって足立くんのことでしょ」
「違う。オドオドしてる割に、俺みたいなのが隣にいる上に自分の顔が良いから僻みに拍車がかかるって、あいついつも言ってる」
「ま、まじか」

思いもかけない真相に私は戦慄する。
たしかに、渡部さんは清楚な雰囲気のする美人であるとは思う。
なにげに顔いいよねとは思ってた。
いや、いいんだけど。いいんだけど。
ま、まじか。

「・・・それは、昔からそうなの?」
「・・・・」

私は他愛ない質問を続けたが、なぜか足立くんは沈黙した。
私の方をじっと見ていた。
なにか、重要な事を語ってもいいものかどうか、判断しようとしているようだった。
息を飲んだ。
彼が、口を開いた。

「ーーー俺のせいなんだ」

その声は、いつもよりも低く感じた。

「由美に友達ができなかったのも」

雨音が、うるさい。
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