ときどき
「ーーーあれは、俺たちが小学校に入る直前のことで」

足立くんは、自分と渡部さんが幼稚園以前からの付き合いである事から語りだした。
家が近かったらしい。
まあ、ありがちなことだ。

「いつもみたいに公園かどこかで遊んでたんだけど、小学校の話になった。由美が、友達ができるか不安だって相談してきたんだ」
「幼稚園ではどうだったの?」
「ふつう。でも、小学校の環境とは全く違うだろ。だから不安だったらしい」

その不安だったらたぶん私も経験済みだ。
あまりよく思い出せないけど、お母さんか誰かに「友達できるかな」ときいたことぐらいはある気がする。

「そんなこと言われても俺もよく分からなかったから」
「ああ、だよね」
「あいつ、昔から他より優秀だったし、まあまあ可愛らしい方だったからな。その点を遠慮せずにアピールしておけば友達ができるんじゃないかと俺は考えた」
「・・・・」
「なので、謙遜をするなと言った」
「・・・待って、それ小学校以前の話だよね。謙遜とか私、知らなかったそのとき」
「俺たちは知ってた」

足立くんは当然のことのように言う。
うわ、友達できなかったの分かった。
この二人、知識の差がまわりと顕著すぎたんだ。

「そのせいで由美は煙たがられてな。結局友達ができなかったんだ」
「・・・でも、今は煙たい感じじゃないよね。喋り方とか、ものすごい丁寧だし」
「あれも、おれのせい」

足立くんは続ける。

「ーーーあれは、小学校も後半にさしかかる頃だった」

ま、またか。
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