狂愛ノ書~紅き鬼と巫女の姫~
「…なりませんよ」
「なんでだ!?少しくらいいいだろ!」
「あなたの少しというのは信用出来ません」
「……この石頭。だから女にモテないんだ」
「それとこれとは話が別です。この私を石頭呼ばわりとは、地獄へ行かれたいようですね?三篠様」
……さっきからずっとこんな感じで三篠と桔梗さんの対立が続いている。
三篠は私と一緒に人間界へ行こうとこっちと人間界を繋ぐ大きな鏡の前に来たら、桔梗さんに見つかった。
桔梗さんの怒ってる感じからして、どうやら三篠は桔梗さんに内緒で人間界に行こうとしたよう。
今は桔梗さんに連れて行かれそうになって三篠は私の腰にしがみついている、という状況。
冷静な桔梗さんだけど、オーラがものすごく怖い。
それとは逆に、三篠は駄々をこねる子供のように私から離れようとしない。
私はどうしたらいいのだろうか。
「…落ち着きなさい、桔梗」
「……深寿様」
ここで救世主とも言える深寿さんがニコニコ笑顔でやって来た。
「三篠は普段の仕事を怠らずに頑張っているわ。だからたまには休ませてあげるのもいいんじゃない?」
「…そ、それは……」
深寿さんの有無を言わさない笑顔に桔梗さんは怯んでいる。
三篠はごもっともと言うようにコクコク頷いている。
「お仕事ならわたくしが手伝うわ。これでどうかしら?」
「……はぁ、分かりましたよ」
三篠の育ての親の深寿さんには敵わない桔梗さんは、頭を抱えながらため息をついた。
こうして私は三篠と共に人間界に繋がる鏡の中に入り、人間界に戻った。