狂愛ノ書~紅き鬼と巫女の姫~
それから深寿さんが荷物を運んでくれて、荷物の整理まで手伝ってくれた。
部屋にはタンスとかクローゼットがあったから、洋服とか下着をそこにしまった。
深寿さんはブラジャーを物珍しそうに見ていた。
だから深寿さんはしてないんですかと言ったら、したことありませんとあり得ない回答が返ってきた。
深寿さんはノーブラなんだと、つい深寿さんの私よりも豊満な胸を見てしまった。
荷物の整理も終わって、深寿さんはゆっくり休んでくださいと言って部屋を出て行った。
今は大きな部屋に一人。
三篠は桔梗さんに連れて行かれて、仕事をしているだろうし。
私はベランダの柵に腕をおき、その上に顎を乗せた。
人間界だと神社の掃除とか、学校の宿題とかやることはたくさんあった。
でも神社もないし、学校は辞めてしまった。
今の私にやることは何もない。
太陽が眩しく輝いている。
もうすぐお昼だから、瑠璃葉と一緒に昼食でも作ろうかな。
何もしないのは、なんだか申し訳ないし。
思い立ったら即行動。
そう思って体を起こす。
バンッ!
「姫様いるかい!?」
「わっ!?」
ノックもなくいきなり襖が開かれた。
驚いてつい声が出てしまった。
開いた襖の方を見ると、そこには丁度噂をしていた瑠璃葉がいた。
「…瑠璃葉?い、いきなりどうしたの…?」
ビックリしすぎて声がスムーズに出せなかった。
でも瑠璃葉はそんなのお構いなしに近付いてきた。
「いや、深寿様に姫様が帰ってきたと聞いてね。
三篠様も仕事でいないし、暇してるんじゃないかと思って」
どうやらアタシの勘は当たったみたいだね。
瑠璃葉はニコッと笑って、私に手を差し伸べた。
私は素直に瑠璃葉の手をとり、立ち上がった。
態々来てくれたんだ。
突然の訪問には驚いたけど、丁度暇してたからすごく嬉しい。
「…ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ。
アタシだけじゃ手が回らなくてね」
「…うん、いいよ」
瑠璃葉の頼み事はすぐに承諾した。
私にも力になれることがあるのなら、力になりたいし。
私の返事に瑠璃葉は「本当かい!?助かるよー!」と笑顔を見せた。
そして私は瑠璃葉に手を引かれ、移動した。