Amarosso~深い愛~の作り方♪
「社長のお客様からはいただけませんから」
そしてグラス磨きを再開した。
この店の経営は北野組だったか。
だから開店前とはいえ、制服姿の怜士に平気で酒を出せたのだろう。
とりあえず怜士は礼を言うと店のドアを開けた。
階段を上がろうと、頂上を見て、足を止める。
こんなビルの立て込んだ都会で。
階段の先は夜の空しかなかった。
そこに上がり始めた満月が浮かんでいる。
麗々とした光。
口元に微笑が浮かぶ。
そして一段づつ近づく。
最後の段を上がりきった。
月ははるか頭上に輝いている。
上がる前と同じだけ相変わらず遠い。
怜士はゆっくりと歩き出した。