Amarosso~深い愛~の作り方♪

「はい、帰りますよ、麗華さん」

「はーい。
 怜士さん」


トレーを持ち上げようとする手が途中で止まった。


「どしたの?」

「なんでもない」


怜士はくるりと背を向けて、ゴミ箱へ向う。

自分が先に口にしたとはいえ、名前を呼ばれて思わずぐっと来た。

ああ、全く面倒だ。

自分の感情が。

思わずお持ち帰りしたくなったが、そういうキャラじゃないし。

色気って言うけどね。

並んで歩きながら、嘆息する。

高等部の制服は夏服に変わっていた。

白系のブラウスであればいいことになっているから、ほとんどの生徒は某アメリカブランドのものだ。

オックスフォードの粗めの生地。

対照的な、なめらかなうなじ。

伸びやかな腕。

麗華の考える、佐和のような色気ではなくて、健康的な色気ってある。

触れてみたくなる。

いつか、誰かがその肌をなぜ、男の肌を教える時が来る。

自分じゃない、誰かが。

麗華の黒塗りの車が見えた。
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