Amarosso~深い愛~の作り方♪
6.秋は意図せぬ前進

  *

夏休みのカテキョで、宮内との距離はかえって遠くなった気がする。

怜士の夏休み前からの態度をやっと気が付いたのか、2学期から麗華は学校内では近づかなくなった。

怜士は生物室への移動で廊下の先に麗華の背中を見つけた。

クラスメートの椋木と歩いている。

同じ実験グループだからというだけの理由じゃないだろう。

椋木という男は、ひょうきんで、女子に面白がられている。

麗華もよくケラケラと笑っている。

サッカー部で、それなりに上手いらしい。

この年代は、その条件がそろえば女子に好まれる。

一体、どういう男が好みなのか知らないが。

何かにイラっとしたが、自分の中で流す。


“何か”が十分わかっているが、どうしようもないのだから、どうしようもない。

争うどころか、同じ土俵にさえ上がれないのだから、どうしようもない。

呪文のように胸の中で唱える。

心の平穏のためには、なるべく見ない、聞かない、だ。
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