Amarosso~深い愛~の作り方♪
6.秋は意図せぬ前進
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夏休みのカテキョで、宮内との距離はかえって遠くなった気がする。
怜士の夏休み前からの態度をやっと気が付いたのか、2学期から麗華は学校内では近づかなくなった。
怜士は生物室への移動で廊下の先に麗華の背中を見つけた。
クラスメートの椋木と歩いている。
同じ実験グループだからというだけの理由じゃないだろう。
椋木という男は、ひょうきんで、女子に面白がられている。
麗華もよくケラケラと笑っている。
サッカー部で、それなりに上手いらしい。
この年代は、その条件がそろえば女子に好まれる。
一体、どういう男が好みなのか知らないが。
何かにイラっとしたが、自分の中で流す。
“何か”が十分わかっているが、どうしようもないのだから、どうしようもない。
争うどころか、同じ土俵にさえ上がれないのだから、どうしようもない。
呪文のように胸の中で唱える。
心の平穏のためには、なるべく見ない、聞かない、だ。