Amarosso~深い愛~の作り方♪
麗華は3度目に腕時計に目をやると、シャーペンを置いて、ノートに伏せていた上体をがばりと起した。
「今泉。
点火祭、行こうよ」
「なんで?」
思わず素の心情が出てしまって、冷たく聞いた。
さっきから麗華が何度か時計を見て、点火祭が気になっているのを知っていた。
「だって、今泉、見たこと無いでしょう?」
麗華をしばしみつめた。
それが本当の理由なのか。
誰か好きな男がいて、誰と一緒なのか気になっているとかではなくて。
その男が一人でいるのを見たら、あっさりと“今泉、ごめん”と言って置き去りにされそうだ。
でも。
その立ち位置は自分が選んだのだし、駄々をこねるのは見苦しいだけだ。
この間、反省したばかりだろう。
自分に言いきかせて席を立った。
学校への戻り道、麗華の駆けるような早足に反比例して、怜士の歩みは鈍かった。
何度か行き過ぎた麗華は足を止めて、振り返り、怜士が追いつくのを待つ。
嬉しそうに、目がきらきらしている。