Amarosso~深い愛~の作り方♪

まっすぐと車へと歩いていく。

スモークが貼ったガラスでは、中は伺い知れない。

だが怜士は視線を微動だにさせなかった。

運転手が飛び出してきて、リムジンのドアを開ける。

中に入り、ドアが閉まると、そこは冬の海の底のようだった。

薄暗く、静かで、寒い。

二人の男は長い間、無言だった。


「初めまして。
 お父さん」


怜士は日本語で皮肉を込めて挨拶をした。

男の口の端が歪んだ。

笑ったらしい。

ゆっくりと顔を怜士へと向けた。

向かい合った二つの顔。

男の髪の毛の色と瞳の色は、怜士よりもずっと明るかった。

後の違いは、老いと若さだ。


「久しぶりだな」


男の日本語は完璧だった。
< 196 / 273 >

この作品をシェア

pagetop