Amarosso~深い愛~の作り方♪
後ろから声をかけられたのに振り返ると、さっきまでのプロレス相手の一人だった。
「悪乗りして、ごめんな。
どっか痛いとこない?」
「大丈夫。
心配してくれて、ありがと。
ちょっと休憩してくるね」
にっこり笑い、ひらひらと手を振って、でも毅然として歩き出す。
微妙に拒否の空気を作っておかないと、ついてきそうだ。
少し一人になって、素になりたかった。
宿泊者である自分たちが大広間に集まっているのだから、人がいなさそうな自販機は、大浴場のところだろう。
修学旅行となると、ずっとある種の演技をしていて気が抜けない。
男っぽく、さばさばして、裏表が無い。
実態に近いが、よりそれを強調している。
嫉妬を買わないため、いつの間にかそれが普通になった。
自分だけじゃないのはわかっている。
みんな、なんかしらの演技をしているもの。
階段を降りて角を曲がる。
思いもしなかった人物がそこにいた。