君の名を呼ぶ度に。
重たそうなドアの先には、いくつもの管に繋がれた無残な姿の翔が小さなベッドに横たわっていた。

柔らかな朝日が緑色のカーテンを通して、翔の体を病的な色に染めていた。

『か……ける?』

翔の名前を呼ぶとそれが合図だったように、翔の瞼はゆっくりと開いていく。

『翔……?あんた、なんか眠れる森の美女みたいだね?でもまだキスしてないよ?』

あ……その前に翔は男の子だったね……─

心配したんだよ?
あたしを心配させるなんて100年早いんだから!

色んな言葉があたしの全身を駆け巡る。

でも外に流れたものは熱い涙で。
それは、翔の開いた胸元に落ちていく。


「どうして泣いてるの?」

それに気づいたのか、翔が口を開く。

「翔って誰?君の大切な人?」

あたしは黙って頷く。

「君……誰?僕は君を知らない」

あたしはそのまま翔の不思議そうな顔をみた。



翔はあんたでしょ??

翔はあたしの命だよ??

あんたの目の前にいる子はね……遊亜だよ??

あたしだよ??





ワスレチャッタノ……?
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