あしたになれば
中年の男性はフラフラと、何をする訳でもなく
「ん―…」
と犬の様に、唸る。

「どうしたのかな?」

奈央は、恐怖におびえるような顔で言う。


『ガシャン』

中年の男は、窓ガラスを割る。
その行動に、レインコートの男以外ビクリとした。

奈央は、邦裕の服の袖をギュッと握り、震えが邦裕に伝わる。


奈央の顔を見ると、震え以上の恐怖を感じている表情をしている。

それを見た邦裕は、奈央を安心させる為に、袖の手をとり握ってあげた。
奈央は、強く握り返した。
中年の男性の腕から血が滴る。
バスは停まり、運転手が中年の男に近づき
「お客さん、どうかしましたか?」


それは、一瞬だった。
中年の男が、運転手の首を掴むと軽く持ち上げ床に叩きつけた。

バスの中は、時が止まったようになる。
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