あしたになれば
運転手は、ビクビクと痙攣をして、叩きつけられた顔から血が流れる。


乗客は席を立ち、出口へ向かい、無理矢理ドアを開け逃げる。

だが、邦裕達は動けなかった。
奈央があまりの恐怖に顔を伏せ、現実逃避をしているからだ。

中年の男は、逃げた乗客に目を向けず、邦裕達のいる方へ向かう。

(なんで、こっちに来るんだよ)

奈央を確認するが、確実に逃げられる状態ではない。
どうしようか悩む、一瞬の判断を要された。

邦裕は、アタッシュケースを開けて、バールを出し威嚇する。

中年の男は、威嚇されているというのに、怯みもせず近付いてくる。

「来るな!」

バールで人を叩きたくない一心で叫ぶ。
だが、聞く耳を持ってはくれない。

邦裕は、心の準備をする。
(しょうがないんだ)

中年の男との距離が、1mきるかきらないかという所で、中年の男は猛獣のように遅いかかってきた。
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