あしたになれば
右手にバール、左手で奈央の手を握り、バスを降り走った。
後ろを見ることなく走る。

激しい雨のせいで足場がぬかるみ、何度も転びそうになる。


助けを求めたい、だが、バスが止まった場所は山道、助けを求めるのは無駄だと思っていたが前に影を見る。

走り近づくと、影は人だと確認できた。

(よかった…)

邦裕の気持ちに余裕ができたが、奈央は不安そうな声で喋りかけてきた。

「はぁはぁ、ねぇ、あの人おかしくない?、はぁはぁ…なんで傘さしてないんだろ?」

「バスの乗客だからじゃないか?」

「あんな服着てた人居たかな?」

「ハァハぁ、居たんじゃないか?」
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