あしたになれば
(喋りかければ分かる)
そう思い「お―い」と叫ぶが、無視をされた。


不安になり、走るスピードを遅くしてバールを握りしめた。

もう一度、「おーい」と叫ぶ。

前方の人は、ゆっくりと後ろを向いた。

邦裕は安心した顔で
「心配し過ぎだったんだよ」

苦笑しながら「うん、ごめんね」

安心もあり、数メートル走った時に奈央が転んでしまった。

「いった~」

「大丈夫?」


苦笑して「うん、大丈夫。なんか恥ずかしい」


「足場ぬかるんでるんだからしょうがないよ」

握っていた手で、奈央を引き上げようとすると、恥ずかしそうにしていた奈央の顔が恐ばる。

奈央の視線に目を向けると、前方の人が操り人形の様に気味の悪い走りで近づいてきた。


奈央は腰を抜かしてしまい、引き上げられなかった。
< 51 / 68 >

この作品をシェア

pagetop