あしたになれば
操り人形の様に走る人は、そんな事を気にせず近づく。


何も考えられない、どうすればいいか分からなかった。


「うぉ――――!!」


邦裕は気が狂った様に叫び、奈央の手を離し、両手でバールを強く握りしめ操り人形の様に走る人へ走った。

近づいて分かった事は、操り人形の様に走る人は女性だという事だ。

だが、しっかり顔を見てゾッとする。


目は黒目しかなく、奇形という言葉しか浮かばない顔。

それを確認して少し後退りをしたが、バールを握り直し、顔面に向けバールを振り抜く。

激しく地面を叩きつける雨の音の中に『ゴギャ』と嫌な音が響く。

その音と共に奇形の顔の女は、邦裕の視界から消えた。

邦裕は振り抜いた方へ視界を向ける。

奇形の女の顔は、バールの形にへこんでいた。

吐き気がした。

はっ、と奈央を見た。
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