あしたになれば
奈央は呆然と邦裕を見ていた。

暴力の現実を受けとめようとしているのだろう。

邦裕は思う。暴力が今助かる最善の手、そう考えるしかなかった。

「見ないでくれ!」

気持ちだけでなく、口に出してしまった。

奇形の女を見る。後悔と怒りが込み上げてくる。
その時、忘れていた耳鳴りがしてきた。歯をくいしばり、眉間にシワを寄せる。

バシャバシャと、邦裕のもとへ奈央は走り抱きついてきた。
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